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2005年7月26日 (火)

宗教テロとグローバリゼーションをめぐって(1)

今日は本来なら、勤務先の大学で三つの学期末試験の試験監督をする予定だったが(私の担当科目の政治学概論を含む)、台風7号の接近に伴って、あさっての木曜日に順延され、今日は休日となった。水害などの被害が出ないことを祈るほかないが、いずれにせよ、思わぬ形でまとまった時間ができたので、以前から少しずつ読み進めていた次の本を、午前中にゆっくり読むことができた:

Jessica Stern, Terror in the Name of God: Why Religious Militants Kill ( HarperCollins Publishers, 2003)

本欄7月15日の記事でも紹介したように、著者はハーバード大学のケネディ・スクールで教えているテロリズム研究者で、本書は、宗教的信念に基づいたテロリストたちを実際に訪ねて(!)インタビューすることによって、「なぜ宗教戦士は人を殺すのか」という問いを探求した、全部で400ページにわたる浩瀚な書物である。

この本を全部読み通したわけではない。読めたページ数はまだまだ不十分であり、あわせて計90ページほどにすぎないが、残りのページについてはまた少しずつ読み進めていくとして、それでも私の研究関心に直接かかわる点、すなわちグローバリゼーションと関わる点については、ある程度その要点をつかめたように思う。私が読んだ計90ページのなかには、この書の結論部分に当たる章(ch.10 Conclusion / Policy Recommendation, pp. 281-296)も含まれてるから、この書物の要点をある程度つかめたと言っても、許されると思う。そこで、今日からしばらくは、この書物の中から、イスラム原理主義のテロリストによるグローバリゼーション批判をわれわれはどう受け止めるべきか?-という点について、ここで試しに論じてみたい。

昨今のテロとグローバリゼーションの関係について、非常に重視すべきと思えたのは、パレスチナの過激派武装組織ハマスの指導者の一人イスマイル・アブ・シャナブIsmail Abu Shanabへのインタビューにおいて、「グローバリゼーションについてどう感じているか」という著者の質問に対するシャナブの次の言葉である(ちなみに、インターネット検索で調べてみたところ、シャナブは2003年8月21日にイスラエル軍により暗殺されたようである。http://www.onweb.to/palestine/siryo/ismail-morisawa.html)。原文の次に拙訳を試みてみよう:

Globalization is just a new colonial system. It is America’s attempt to dominate the rest of the world economically rather than militarily. It will worsen the gap between rich and poor. America is trying to spread its consumer culture. These values are not good for human being. The problem with pursuing capitalism as an end in itself is that the name of the game is the dollar. In the West, money really does talk. This is bad for the human being. It leads to disaster for communities. (Stern, Terror in the Name of God, pp. 38-39)

グローバリゼーションは、新たな植民地システムにすぎない。それは残りの世界を軍事的というよりは経済的に支配しようとするアメリカの企みである。それは貧富の格差を悪化させるだろう。アメリカはその消費文化を〔世界に〕広げようとしている。これらの価値は人間にとってよいものではない。資本主義を目的それ自体として追求することにともなう問題は、そのゲームの名前がドルであるということだ。西洋では、まさにカネがものを言う。これは人間にとって悪いことだ。それは共同体にとっての災厄につながる(山中訳)。

このシャナブという人物は、コロラド大学でエンジニアリングを学んだ(ibid., p. 38)というから、エリート知識人であり、アメリカ人の生活ぶりについても身近に知っていたことと思われる。このインタヴューにおける会話も、通訳を介さずに、英語で直接交わされたものに違いない。

このシャナブという人物から出たグローバリゼーション批判の要点は、次の二点にわたってなされたものと考えることができるだろう。すなわち、(1)政治・経済的側面と(2)文化・倫理的側面である。

そこで、以下では、この二点にわたるグローバリゼーション批判について、考察を加えていこうと思う。

〔つづく〕

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