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2006年5月23日 (火)

環境税を考える(2)

本欄の昨日の記事でのポイントを改めて簡潔に述べるならば、それは次のとおりであった:

大気中のCO2の増大と地球温暖化という2つの現象の間には因果関係があることが推定されるべきである。あまりにもそのメカニズムが複雑であるために、その因果関係を科学的な意味で完璧に証明できていないからといって、「大気中のCO2の増大と地球温暖化という2つの現象は無関係である」と速断してしまってはならない。むしろ、取り返しのつかない大惨事が起こる前に、直ちに未然の防止策に本格的に取り組むべきである。つまり、地球温暖化のような“複雑系”の問題に関しては、科学的証明よりも予防原則が優先すべきなのである。

今日から環境税について取り上げていくに際しては、このポイントを大前提としておかなければならない。というのも、環境税とは、環境問題が従来の産業公害とはきわめて異質な地球温暖化問題へと変化していく中で必要だと言われるようになった、新たな環境対策だからである。

ところが、この環境税に対して、経済界は強硬に反対し続けている。それは一体なぜなのであろうか? その反対は果たして妥当といえるものなのだろうか?

本欄の「環境税を考える」の連載では、このことについて、考察を加えていくことにしたい。

なお、環境税について本欄で取り上げるにあたって依拠した文献は、石 弘光(いしひろみつ)著『環境税とは何か』(岩波新書、1999年)である。今から7年前の書物だが、環境税について学ぶに当たって、今でも充分通用する豊かな内容を備えた良書であると思う。実際、石氏はわが国における税制問題の第一人者のひとりであり、環境税の問題についても、政府税制調査会委員の一人として積極的に取り組んでいる研究者(一橋大学名誉教授)である。

本欄では、この石氏の書物に大幅に依拠しつつ、ハイエク研究者の一人としての筆者の視点も加えつつ、環境税について考えていくことにしたい。

○環境税とは?:その予備的な確認
まず環境税とはそもそも何であろうか? これについて理解を深めてもらうためには、本欄での連載全体を通じて、多くの説明をしていく必要があるが、本格的に論じるに先立って、まずは予備的に、簡単に確認しておくことにしよう。

環境税とは、その最も狭い意味では、「CO2排出量の抑制を目標に、化石燃料が排出する炭素含有量に賦課する炭素税」のことを指している。しかし、もっと広い意味では、「地球温暖化防止に限らず、およそ環境に負荷を与える財・サービス全般を課税の対象」とする税制一般のことも指すことになる〔以上については、『環境税とは何か』iiページを参照〕。

石氏の書物では、この広い意味での環境税が一般的に取り上げられているが、本欄では環境問題の中でも地球温暖化問題にその対象を限定したいので、ここで“環境税”という場合は、その最も狭い意味たる“炭素税”を指すものとして用いることにしたい。

さて、環境税=炭素税の具体例としてここで簡単な例を出すとすれば、ガソリンや灯油など、石油からくる燃料が挙げられるだろう。石油はその成分として炭素(化学記号はC)を含む化石燃料であり、それを燃やすと酸素(化学記号はO)と結合して、CO2という代表的な温室効果ガスとなって大気中に排出され、地球温暖化が進むことになる。

今は厳密な議論を避け、とりあえず具体的なイメージを学生諸君に持ってもらうために、話を思い切り単純化しておくと、要するに、環境税がガソリンや灯油にかけられると、それだけガソリン・灯油の値段が上がることになる。値段が上がれば、消費者はその使用を控えようとするだろう。そうすると、それだけガソリンや灯油の使用が抑制されることになるから、その結果、CO2の排出が抑制されることになるのである。

つまり、

ガソリン・灯油に環境税
 ↓
ガソリン・灯油の値段が上がる
 ↓
ガソリン・灯油の使用が控えられる
 ↓
CO2の排出が抑えられる

--というわけである。

とはいっても、これは非常に単純化された図式であって、現実にこうなるためには、さらに厳密な条件が必要とされるが、説明の便宜上、今の段階ではこの単純な図式だけにとどめておこう。

○新たな環境対策としての環境税
さて、この環境税=炭素税は、従来からすでに行なわれてきている環境対策とは異なった、新たな環境対策である。従来から実施されてきた環境対策というのは、次の2つである:

・政府による直接規制
・民間による自主的な取組み

この2つはもちろん、これからも当然なされなければならない重要な環境対策である。そして経済界の立場は、環境税を導入することなく、これからもこの従来からの対策で対応していくべきだ、というものである。

ところが石氏によると、環境問題が従来の産業公害とは質を異にした“地球温暖化問題”へと変化を遂げてしまったために、この従来からの対策だけでは不充分だと言われるようになってきたのである。そういう中で唱えられるようになってきたのが、環境税に他ならない〔『環境税とは何か』ii~iiiページ〕。

ところで、そもそも地球温暖化がなぜ、数ある環境問題の中で最も深刻なものと言えるのであろうか? 今回はこれぐらいにして、次回に説明することにしよう。

≪続く≫

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