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2006年6月 4日 (日)

NHKスペシャル『気候大異変』(2)

NHKスペシャル『気候大異変』の内容を伝える本欄の連載(1)では、温暖化による海水温の上昇により熱帯低気圧がその勢力を巨大化させる恐れについて、またその発生地域が南米沖での温帯にまで拡大する恐れ、すなわち単にこれまでのように赤道付近で発生し温帯へと北上するのみならず、発生地域自体が温帯になる可能性も否定できないことについて、述べてきた。

そのときに書き漏らしていたが、熱帯低気圧によるものだけではなく、ただの雨でも、その降り方は極端になる恐れがあるという。日本や中国で、南部では雨量の増加により洪水が頻発する一方、逆に北部では雨量の減少による乾燥化・砂漠化が懸念されているのである。実際、中国の内モンゴル自治区のアラゼンで、現に今、かつて草原だった地域が砂漠化しつつある様子が映し出されていた。それは、これまで言われてきたように、たんに過剰な放牧によるだけでなく、温暖化が砂漠化に拍車をかけている可能性もあるという。

もう一つ注意しなければならないのは、総雨量のみならず、その雨の降り方である。バケツをひっくり返したような豪雨により、川の氾濫やがけ崩れが起こるが、100年後の豪雨の頻度は、総雨量は減少する北部でも増加するというのである…!

このような気候の極端化は、世界各地で起こると予想されている。

さて、今日もその『気候大異変』の内容を本欄でお伝えしていくことにしよう。番組自体は1回につき50分の放送が2回にわたって行なわれたが、本欄での連載を同じ2回に止めようとすると、一本あたりの記事が非常に長くなりそうなので、本欄ではさらに細かく分けて連載していくことにしたい。今日はその第2回目である。

○地球シミュレータの想定:CO2=700ppm、気温4.2度上昇
まず地球シミュレータでの計算の前提となっているCO2の濃度を確認しておこう。現在の濃度は370ppmであるが、何も対策を採らずに化石燃料を使用し続ければ、2100年には960ppmにまで上昇してしまう。仮に京都議定書の目標を先進国がすべて達成しても、CO2濃度は860ppmとなる。

さらに世界がエネルギーを効率的に使いながら経済成長を維持した場合、CO2濃度は700ppmとなり、その場合、気温は最悪の場合4.2度上昇する。これが地球シミュレータの計算の前提である。この場合、どのような気候変動が起こることになるのだろうか?

○温暖化による乾燥化・砂漠化→食糧不足の恐れ

・アマゾンの広大な森が2100年には砂漠になる恐れ

先述したように、世界がエネルギーを効率的に使いながら経済成長を維持した場合、気温は2100年には最大4.2度上昇すると地球シミュレータは予測しているが、その場合、温暖化により生態系にさまざまな影響を及ぼすことが心配されているのは、乾燥化である。

中でも世界の研究者が注目しているのはアマゾンの広大な熱帯雨林である。昨年8~10月、アマゾン川流域では記録的な大渇水に襲われた。幅10kmもの川が干上がってしまい、酸素不足のため魚の死体が折り重なっている映像はかなりショッキングであった。川の水位は5~10mも低くなり、漁師に打撃を与えた。地元住民は水上に家を浮かべて生活しているが、その家も川底についてしまっていた。

アマゾンの熱帯雨林の面積は日本の10倍以上もある。本来ならば大西洋から湿った空気がアマゾン上空に流れ込み、アンデス山脈にぶつかって雲ができ、雨が降る。この雨が再び蒸発して雲を作り雨を降らせるという水の循環が、豊かな熱帯雨林を育んできたのである。

ところが海水温の異常な上昇が、大西洋上で上昇気流を発生させてしまった。そうなると、その上昇気流が海上で雲を作り、陸ではなく海に雨を降らせる。そうなると、陸上には湿った空気ではなく、海上で雨を降らせて乾燥した空気が下降気流として流れ込む。水の循環は海上でのみ起こり、陸には乾燥した下降気流が流れ込み、雨が降りにくくなってしまったのである。

イギリス生態系水文学センターのピーター・コックス博士が、2100年までのアマゾン熱帯雨林のシミュレーションを行なったところ、今世紀半ばから、河口付近から上流に向かって森が次々と失われていき、砂漠へと変わってしまうという。2100年には森の3分の2が失われ、アラビア半島を上回る砂漠が広がってしまうのである。これは、伐採によらなくとも、温暖化による乾燥化の影響だけで、森が砂漠化してしまう恐れがあることを意味している。

アマゾンが砂漠化すれば、熱帯雨林によって吸収され貯蔵されていた膨大な量のCO2--それは現在世界中で排出されているCO2の8年分に相当するという--が大気中に放出されてしまう。そうなると、それが再び温暖化を促進する、それがさらに森を砂漠化し、CO2が放出…という悪循環へと陥ってしまうのである。

・スペインで昨年夏に深刻な水不足

このような乾燥化は、食糧不足をも引き起こす。

昨年夏、スペインで、都市の生活用水を農村へと回すよう求めるデモが行なわれていた。深刻な水不足が農業に大きな打撃を与えていたからである。穀物の収穫量が40%以上減ってしまったのである。その結果、スペイン政府はEUに穀物800万トンの支援を求めたという。

このスペインの乾燥化は、去年に突然起こったわけではなかった。たとえば、総貯水量8億トン、日本の霞ヶ浦とほぼ同じ大きさのエントレペーニャス貯水湖では、その貯水量が年々減少してきた。過去40年の気温が徐々に上がり、土壌の乾燥化が進んできたのである。そうしたなかで去年の降雨量は特に少なかったため、貯水量がとうとう20%を下回ってしまったという。

こうした水不足が世界の食糧生産に深刻な影響を及ぼすことが心配されている。日本でも、米の収穫量が減少してしまうだろう。というのも、稲は少々の気温の上昇なら収量は増えるが、上がりすぎると逆に減ってしまうからである。日本全体で2060年代には10%減少してしまうかもしれないという。

こうした減産が世界各地で起こり、穀物価格が20%以上も上昇すると、輸入に頼る国は大打撃を受けるだろう。とくにアフリカなどの貧しい国への影響は大きく、温暖化により飢餓人口がさらに5400万人増加するかもしれないのである。

≪続く≫

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