« NHKスペシャル『気候大異変』(2) | トップページ | NHKスペシャル『気候大異変』(4・完) »

2006年6月 5日 (月)

NHKスペシャル『気候大異変』(3)

○熱帯地方の伝染病が温帯地方に拡大:デング熱

地球温暖化がもたらす気候の変化により、もうひとつ心配されるのは、熱帯地方特有の感染症が、温帯地方にも拡大することである。NHKスペシャルで取り上げられていたのは、デング熱である。

デング熱というのは、40度近い高熱が出て、体中に発疹が生じる病気だ。元デング熱患者の話によると、「死んだ方がマシというのはまさにあのことです。毎晩まるで骨を虫にかまれるような激しい痛み。だるくて身体に力が入らず、辛くてたまらなかった」という。「骨を虫でかまれるような痛み」とは一体どんな痛みなのだろう…? 私には想像がつかない(想像したくもないし、ましてや経験したくもない)が、まさに想像を絶する痛みなのだろう。

そのデング熱の感染地域が、実はもう日本のスグそばにまで広がってきているというのである。それは、台湾南部である。

このデング熱は、二度目の感染でより重いデング出血熱へと進行してしまうことが多いらしい。このデング出血熱とは、皮膚組織や消化器官などからの出血が止まらなくなる病気である。その患者の顔が(目にボカシがかけられて)画像に映し出されていたが、それはそれは、恐ろしいものだった。口から血が流れ出ている映像だったからである。

なぜ二度目の感染でこうなりやすいのか、その原因は不明で、ワクチンもまだないという。毎年熱帯地方を中心に世界でおよそ24,000人が亡くなっているのだそうだ。番組では、この二度目の感染で妻を亡くしたという男性が取材されていた。「妻は以前にもかかったことがあり、そのときには症状が軽かったんです。今回の感染でまさか命を落とすことになるとは思いもよらなかった」という。

2002年の夏、台湾南部でこのデング熱が爆発的に流行、21人が死亡した。90年代を通じて感染者数は毎年数百人程度だったのが、2002年には五千人を越えたというのである。

この大流行と関係していたのではないかと思われるのが、台湾・高雄大学の白秀華助教授によると、“冬の気温”だという。

このデング熱を媒介するのはネッタイシマカという蚊であるが、台湾では冬になると月の平均気温が20度を下回り、ネッタイシマカは消滅してきた。ところが、97年以降は冬でも20度を下回らないことが多くなり、拡大の条件が整ってきていたというのである。そして2001-2002年にかけての冬、ネッタイシマカが生息し続け、大流行を引き起こした可能性があると、白助教授はNHKの取材に対して答えていた。

台湾では必死の防除作業(薬の大量散布)により、今のところ2002年のような大流行は免れているが、このまま温暖化が続けば、台湾南部のみならずその全土に広がってしまうのではないかと台湾当局は警戒しているという。

地球シミュレータの予測によると、デング熱の危険地域に暮らす人口は、現在の25億人から2080年代には52億人となるかもしれない。100年後には、沖縄や九州など、日本にも感染地域が広がってくるかもしれないのである。気温の上昇により、デング熱だけではなく、マラリアやコレラなどの病気の感染地域が拡大する恐れが心配されている。

○熱波による死亡の危険
このような熱帯地方特有の感染症にかからずとも、温暖化により温帯地方で真夏日が増えてくると、温帯地方の人々に新たな危険がやってくる。それは、熱波による死亡の危険である。

2003年仏、普段なら北海道を思わせるような、日中の最高気温が24度の涼しい快適な夏のパリで、この年の夏には35度を越える日が10日以上も続いた。その熱波の影響で、フランスで15,000人が死亡した。欧州全体での死者は30,000人にのぼったという。

熱帯地方の人々にとっては、毎日が同じような気温であるから適応しやすいのだが、温帯地方ではあるときは20度、あるときは35度というように、気温が激しく変化するのである。そうなると人間の身体は適応できない。脱水症状を起こし、体温が急上昇、脳や心臓の細胞が破壊され、死に至る危険性が高まることになる。地球シミュレータのデータにより計算した結果、熱波による死亡者の数が増えると予想されているという。アメリカでも国を挙げて熱波対策が進められている様子が放映されていた。

このように、温暖化により、熱帯地方特有の感染症の温帯地方への拡大、そして熱波による温帯地方の人々の死亡の危険性が高まることが懸念されるのである。

≪続く≫

|

« NHKスペシャル『気候大異変』(2) | トップページ | NHKスペシャル『気候大異変』(4・完) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« NHKスペシャル『気候大異変』(2) | トップページ | NHKスペシャル『気候大異変』(4・完) »