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2006年6月27日 (火)

チャンクでつなげていく英会話:『英語感覚が身につく実践的指導』を読む

本欄の6月20日の記事で、NHK教育テレビの「新感覚 キーワードで英会話」を担当されている田中茂範教授(慶應大学)の編集された『Eゲイト英和辞典』のことについて触れたが、今日は、同じく田中教授(と佐藤芳明氏・阿部一氏の三氏の共著)の『英語感覚が身につく実践的指導:コアとチャンクの活用法』(大修館書店、2006年6月刊)について、書くことにしよう。

この本を手に入れたのはつい最近だが、この本にも大変参考になることが書かれてあった。そのうち単語のコア・イメージを知りそれを身に付けていくことの重要性については、『Eゲイト英和辞典』と共通するので、今日は「チャンクの活用法」について、これまで漠然と感じつつあったことが本書に明確に書かれてあったことを、読者の皆さんにお伝えしておきたいと思う。

私がこれまで漠然と感じつつあったが、それがまさに明確に書かれていたこととは一体何であったのかというと、それは、会話の場合、「何かを話そうとした場合、完全な文がいきなり浮かんでくることはなく、むしろ表現断片が呼び起こされ、それに新たな表現断片を先行断片に連鎖化させることで、言いたいことを表現する」(『英語感覚が身につく実践的指導』p. 187)ということである。この表現断片のことを、本書では「表現チャンク」あるいは単に「チャンク(chunk)」と呼び、それが別のチャンクを呼び起こすという連鎖反応のことを「チャンキング(chunking)」と呼んでいる(p. 187)。

つまり、現実の会話においては、論理的に完結した文章がはじめから完成された形で述べられるのではなく、言い直し、ためらい、言い換え、繰り返しなどといった試行錯誤がされていきながら、ある表現断片(チャンク)が、連鎖反応的に次のチャンクを呼び起こし、そのチャンクの連鎖によって、結果としてある文章が編成されていくというのである(pp. 185-189)。

実際、インタビューにおける会話の聞き取り練習をしようとすると、きれいな文章がよどみなくながれていくというのではなく、まさに言い直し、ためらい、言い換え、繰り返しなどといった試行錯誤がされていきながら、会話が次々と展開されていく。したがって、その教材で文字化された英文を読むと、文の最初と最後で必ずしも首尾一貫していない場合が多い。たしかに、全体としてはおおまかな意味が共通しているのだが、それが書き言葉におけるように最初から完成された文章として語られているのではないのである。

このことは、英会話の上達に向けて、非常に大切なことを意味している。それは、「即興で、英文を話す、つまり、意味を編成するとはどういう営みであるかが分かるはずである。それは、文を作るという認知的負荷を下げることにもつながり、気楽に英語を話すことの弾みになる」(p. 205)ということである。

この「気楽に英語を話すことの弾み」となるもう一つのこととして本書で挙げられているのは、「単語が足りないという思い(幻想)を捨てる」ということである。つまり、「もちろん、必要に応じて単語の駒数は増やしていく必要はあるが、とにかく持ち駒を有効利用することが肝心である」というのである(p. 243)。

たとえば、本書では「花を生ける」という表現を英語にしようとする場合が挙げられているが、その場合、arrangeが思い浮かばなければ、put flowers in a vaseでもよい、というわけである。そこにelegantlyを加えれば、より一層、本来言いたいことに近づく。いずれにせよ、こうした状況でputを使うことができる、ということが重要なのである(p. 243)。

この「単語が足りないという思いを捨て、持ち駒で勝負する」ということに加えて、会話の途中で、相手から、自分のわからない単語を引き出すということもできる。本書で挙げられているのは、たとえば、I'm looking for...と言って「栓抜き」に相当する言葉が思い浮かばないとする。その場合、I don't know how to say it.とか、What do you call it? などのように、「単語がわからないんだけど、どう言うんだっけ?」と相手に聞くのである。それでもダメなら、I want to drink this.などと状況説明をするなどして、要するにあきらめないで意図を伝えるのである。そうすれば、相手から的確な表現(a bottle opener)を得ることができることもある、というのである(pp. 245-246)。それでもどうしても埒が明かない場合は、well, forget it, well anyway,などといって話題を放棄して、別の話題に行くこともできるという(p. 246)。

いずれにせよ、実際に英語で会話をしようとする場合、文を最初から完璧に組み立てて完成させた上で言わなければいけないとか、単語が足りないという思いから躊躇するのではなく、文を作るという思いを捨ててチャンクでつなげ、持ち駒の単語を使い切る、という姿勢で積極的に会話にチャレンジすべし、ということなのである。

このことは、私が以前から漠然と感じていたことではあったが、それが今回、本書で明確に力強く説かれているのに触れて、非常に意を強くした。もちろん正しい文章を作れることは大事だし、単語を増やすこともきわめて大切である。しかしそのことにとらわれすぎて、英会話に躊躇してしまうのも、大変もったいないことだろうし、それでは上達もできないだろう。とにかく練習を実際にしていかなければ、上達できないからである。

そのようなわけで、もちろん一方では正しい英文法を身につけたり、単語を増やしていく努力は継続していきつつ、躊躇することなく、手持ちの単語とチャンクでつなげていくこととで、思い切って英会話を実践していきたいと改めて決意した次第である。

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コメント

初めまして。
私も、この本は非常に役に立ちました。
英語を身につけるためには、英語の感覚(英語脳?)って大事ですよね。
トラックバックさせて頂きました。
よろしくお願いします。

投稿: センス | 2006年7月15日 (土) 07時28分

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