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2006年6月28日 (水)

豪のツバルへの対応:是か非か?

昨日の総合演習(教職)の授業では、テキスト『ツバル:地球温暖化に沈む国』の第8章に書いてある、オーストラリアのツバルへの対応の是非について、私が司会役となって、議論形式で授業を行ない、受講者全員(18名中、今回の出席者17名)に(少なくとも一度は)発言をしてもらったが、なかなか興味深い授業となった。

確認のため、オーストラリアの対応について簡単に振り返っておくと、オーストラリア自由党のハワード政権は、海面下に没しつつある国土を捨てて移住の決断をしたツバルからの受け入れ要請を断った。その理由は、大きく分けて、次の二つであった。(1)そもそもハワード政権は、移民の受け入れに対して厳しい姿勢をとっていること。(2)またハワード政権は地球温暖化問題に対しても消極的な姿勢をとっていること--この二つである。

このオーストラリアのツバルに対する姿勢について、受講者諸君に是非を問うてみたところ、私の予想に反して、是とする学生も少なくなかった。それに対して、非とする学生からいくつかの反論が提示され、それに対して是とする学生から再反論も出されたので、なかなか活発な議論となった。

是とする学生諸君の挙げた根拠の中で最も多かったのは、「移民の受け入れには多くの困難が伴うから」というものであった。それに対して、非とする学生諸君の挙げた根拠の最たるものは、「(受け入れ側の大変さ以上に)移住を決断したツバルの人々は困難な状況に置かれているのだから、やはり受け入れるべきだ」というものであった。

それに対して、私が両者にコメントしたことは、次の通りであった:

是とする学生諸君に対して…その場合、それでは一体、ツバルの人々への処遇をどうすべきかについて、さらに深く考える必要があるでしょう。

非とする学生諸君に対して…とはいえ、やはり受け入れには困難が伴うことも事実ですから、それでは一体、その困難をどうすれば克服すればよいのかについて、考察を深めておくべきでしょう。

このように双方にコメントを加えるにとどめ、私自身の意見はあえて述べなかった。というのも、この授業でのねらいは、私自身の見解を受講者諸君に押し付けることではなく、この議論をきっかけにして諸君自身の力でさらに深く考えていく契機としてほしい、ということだったからである。

ところが、その授業終了後、三人の学生が私のところにやって来て、「先生のご意見を聞かせて下さい…!」と懇願してきたのである。

そのため、その三人の学生には私の見解を伝えたが、そうなると他の受講者諸君にも私の意見に触れる機会を与えておく必要があると思ったので、本欄にそれを簡潔に書いておきたいと思う。

私自身の意見は、オーストラリアの対応を非とするものである。すなわち、オーストラリアはツバルの人々を自国に受け入れるべきである、というのが私の意見である。というのも、科学的にまだ厳密には決着がついていないとはいえ、やはりIPCCのレポートが結論付けたとおり、地球温暖化による海面上昇の原因は人間の側にあると推定すべきであり(この点については本欄5月22日の記事「CO2の増大は地球温暖化と無関係?」を参照)、そうなるとオーストラリアにもツバルの窮状に対する責任は大いにあるから、たとえ困難でも、やはり受け入れるべきだと思うからである。

この場合、非とする学生諸君に対して私自身がコメントしたように、「それでは一体、受け入れに伴う問題をどう解決していくべきか」について一定の解答を持ち合わせていなければならないのだが、実をいうと、私にはまだ、そのための解答が得られていない。実は私自身も現在、考察中なのである。というわけで、上記のコメントは、実は私自身に対するものでもあったことを、ここで正直に告白しておかねばならない。

授業の最後に述べたように、すでに日本にも70万人を越える外国人労働者がすでに存在している。したがって、わが国においても、移民問題はこれから避けて通れない重要課題となるだろう。ましてや、環境難民がツバル以外にも発生してしまった場合--もちろんその発生を防ぐことが最も重要なのだが--、日本は紛れもなく地球温暖化問題における加害者の一員だから、たとえ困難を伴うとしても、やはり環境難民は受け入れなければならないだろうと思う。その場合の問題は、その困難をどうやって克服すべきかである。

しかしながら、困難だからといって、受け入れを拒否すべきではないだろうとも思う。というのも、このグローバル化の時代にあって、もはや自国のみの利害に終始することは決して許されないと思われるからである。

最後に、学生諸君の意見の中で、「オーストラリアが地球温暖化に消極的なのは、致し方ない面もある。というのも、豊かな生活との両立がまだ難しい場合、やはり豊かな生活を維持したいと思うのは無理のないことだから」という意見も出た。この場合の論点は、次の二つである:

①「豊かな生活」とは何か? 現在の先進諸国での物質的な豊かさは、本当の意味で幸福な生活だと言えるだろうか?

②“経済と環境”の両立は本当に不可能なのだろうか?

この二点についても、残りの授業で、議論のテーマとして取り上げたいと思っているので、楽しみにしておいていただきたい。

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