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2007年2月 6日 (火)

温暖化防止をめぐる米と仏

地球温暖化の人為性を強く指摘したIPCC第1作業部会の第4次報告書を受けて、温暖化を遅らせて地球を守るため、違反者を罰する権限をもった新たな世界環境監査機関(world environmental monitor)の創設をフランスが提唱し、フランス以外に45ヵ国がその呼びかけに応じたことを伝えるAP通信の記事が、昨日のヘラルド朝日紙に掲載されていた(オンラインではこちら)。その提唱者はフランスのシラク大統領である。

ところが、この呼びかけに応じなかったのが、アメリカ、中国、それにインドだったという。いずれも、経済力の(さらなる)発展に熱心な政権の国である。それに対して、仏シラク大統領は、名指しこそしなかったとはいえ、アメリカに対する不満を表明したという。また、それに先立って、シラク大統領は先週、アメリカに対して、もしも地球気候に関する諸協定(global climate accords)にアメリカが署名しないのであれば、アメリカからの輸出品に炭素税がかけられることになるだろうと警告したことを、このAP通信は伝えている。

しかし、米ブッシュ政権は、1月の一般教書演説で、米国内での石油消費量の大幅な削減は謳ったものの、CO2の排出削減を義務化することには、依然として否定的な態度をとっている。IPCCの第4次報告書についても、米フラット副報道官は「結論は有意義だ」と記者団に述べたものの、世界最大の排出国として気温上昇の悪影響には判断を示さず、ブッシュ大統領も特別な声明を出さなかったと、日本経済新聞が伝えている(こちら)。

たしかに、シラク大統領の提唱したような監査機関は、私も必要とならざるをえないと思う。しかしながらそれは、≪①化石燃料からの、さらには②原子力からの脱却 ⇒ 自然エネルギーへの全面的転換≫に向けての国際的・世界的な協力体制の構築を伴わない限り、米国(および中国・インド)をも巻き込んだ全世界的な監査体制には、到底なりえないだろうと私は思う。

というのも、一方において、化石燃料に依拠している限りにおいては(上記①)、CO2削減の義務化は、取りも直さず、経済力の低下を意味するがゆえに、米ブッシュ政権にしてみれば、それは“環境”に名を借りた“フランスのアメリカ国力の低下戦略”と見えてしまうだろうからである。

国際政治を「国益をめぐる主権国家同士のせめぎあい」と見る限り、軍縮でさえ、ライバルの国力を低下させるための道具として悪用されてしまう。それと同じように、地球温暖化防止でさえ、劣位国(仏)の優位国(米)に対する国力低下の試みへと、そしてその試みに対する優位国の抵抗へと、たちどころに変貌してしまう。国際政治が国家主権同士の国益の対立としての性格から脱しきれていない以上、悲しいことではあるが、地球温暖化防止を謳うメッセージでさえ、権力闘争の具となってしまいかねないであろう。

しかし、地球温暖化=気候変動の脅威は、世界各国に、国家主権の自己主張からの脱却を強力に迫っている。したがって、強制力を伴う全世界的なCO2削減の監視体制の構築のためには、化石燃料からの脱却⇒自然エネルギーへの転換を目指す国際協力が、絶対に必要不可欠であろう。さもなければ、CO2削減の義務化が経済力=国力の低下を招くという疑念を拭い去ることができないからである。

また他方において、フランスは、石油に代わるエネルギー源として、原子力発電を強力に推進している国である(上記②)。そしてシラク大統領は、かつて1995年に南太平洋ムルロア環礁で、核実験を強行した人物に他ならない。言うまでもなく、核実験という行為は、国家主権の強烈な自己主張であり、かつ自然環境破壊の最たるものである。そのような前歴のある人物に、しかも、いつ軍事目的に転用されてもおかしくない原子力による発電を強力に推し進めている国から、CO2削減義務化のための監視体制の構築を謳われたところで、米ブッシュ大統領にしてみれば、とうてい信頼しきれないことだろう。どうしても安全保障上の懸念をぬぐいきれないからである。したがって、フランスが地球温暖化防止のために全幅の信頼を得るためには、化石燃料のみならず、原子力からの脱却こそが、求められるはずである。

しかしながら、それと同時に、核の放棄をフランスにだけ求めても、それは無理な話であろう。全世界的にそれが行なわれなければ、互いに疑心暗鬼に陥って、どの国も自分から進んで核放棄に踏み切れないからである。安全保障のジレンマから抜けられないのである。だからこそ、全世界的な核放棄に向けた信頼関係の醸成が、地球環境のためにも必要とされるはずなのである。

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