« 橋本努氏による書評 | トップページ | 学生委員長としての日々 »

2007年5月21日 (月)

国際シンポ「持続可能な発展のための民主主義」に参加

5月18日(金)~20日(日)の三日間にかけて京都大学大学院人間・環境学研究科で開催された国際シンポジウム「持続可能な発展のための民主主義」に参加してきた。といっても、校務の関係で、参加できたのは二日目の午前中までだったが、それでも得られたものはなかなか大きかった。

初日の午後1時からスタートした基調講演には間に合わなかったのだが、同日2時より始まった第1セッション「持続可能な発展のための環境ガバナンスを支える民主主義の理念と実践」での報告や討論から伺えたことは、環境問題の解決にむけて、民主主義が一つの試練にさらされていることだった。というのも、民主的な政治決定が必ずしも環境問題の迅速な解決に寄与できるわけではないため、環境問題の解決のみを考えるのであれば、むしろ一種の環境エリートによるプラトン的な“哲人王政治”の方がよいようにも思われるからである。かつて倫理学者の加藤尚武氏はその著『環境倫理学のすすめ』(丸善ライブラリー)で世代間倫理の重要性を訴えた上で、その世代間倫理の要請が、往々にして現世代の利益しか考えようとしない民主主義に対して重大な挑戦となっていると指摘していたが、その問題が今まさに問われているのだということを改めて痛感した。

二日目の午前に行われた第2セッションでは、中国が取り上げられた。「中国における環境ガバナンスの現状と課題」と題されたこのセッションにおける3名からの報告の中で、特に私の注目を惹いたのは、第2報告者の包茂紅・北京大学教授による、中国の環境NGOの活動についての報告だった。まず中国における環境NGOの数が現在2,768にも上るという事実に驚かされた(これは日本の環境NGOの数をはるかに上回るのだそうである)。包教授によると、1978年に中国最初の環境NGOができたが、1994年以来増加し始め、現在に至っているのだという。

だが、その中国の環境NGOにきわめて特徴的なのは、実はそのNGOが、NGOであるはずにもかかわらず、実は一種の「官許」によるものが多いということである。すなわち、中国での環境NGOのうち、49.9%が実は政府によって上から組織されたNGO--これをGONGOというのだそうである--であり、草の根のNGOは7.3%にすぎない。彼らの活動は、政府を批判するものというよりは、むしろ政府が環境問題に取り組むのを助けるのを目的としているのだ、というのである。従って、こうした活動が中国の民主化につながると単純に楽観視できるわけではない、というのが包教授の主張であった。というのも、包教授によれば、環境NGOが反政府勢力になるのを防ぐために、政府によって規制された枠組の内部でのみ、その活動は許されているからである。それゆえに、中国における市民社会形成の道のりはまだまだ長くなりそうである--というのが包教授の結論であった。本ブログで以前に書いた中国における独特の国家-社会関係のあり方(こちらこちら)が、ここにも現れているように思う。

その第2セッションでもう一つ私の注目を惹いたのは、オーストリア国立大学のキャサリン・モートン教授による第1報告のなかで、(市場主義者の主張にもかかわらず)土地の私有化がかえって環境悪化につながる場合が中国において発生しているという指摘がなされていることだった。その報告ペーパーでは簡単に指摘されているだけだったので、この点について質問し、さらに詳しい話を聞いてみたいと思ったのだが、校務の関係でもう出発する時間になってしまったので、そのセッションの終了を待たずに会場を後にしなければならなかったのは大変残念だったが、今後私が自由化と環境問題との関係を考えていく上で、重要な示唆を得ることはできたと思う。

この国際シンポジウムに参加して、もう一つの嬉しい収穫は、これまで参加してきたいくつかの国際シンポジウムの中で、英語の聞き取りが最もよくできたことだった。報告者の発音が大変明快だったことも大いに助けになったが、それにしても大体80%~90%ぐらいは、直に聞いて理解できたような気がする。とはいえ、ちょっと気を抜くとやはり分からなくなるので、同時通訳に頼ることもあったが、そのイヤホンがなくとも聞き取れることがたくさんあったことは、とても嬉しかった。それとともに、同時通訳者の方々(そういえば全て女性だった)のすばらしい力量には、改めて驚嘆した次第である。

今回、このシンポジウムに参加できたのは、その実行委員長を務められた足立幸男・京都大学大学院人間・環境学研究科教授(公共政策学)より、その開催のお知らせをいただいたおかげであった。またそのシンポジウムで、足立先生門下の研究者や共同研究者の皆さんに(久しぶりに、あるいは初めて)お会いでき、旧交を温めるとともに新たな出会いにも恵まれたことは、大変有難いことだった。この場を借りて、厚く御礼申し上げる次第である。

|

« 橋本努氏による書評 | トップページ | 学生委員長としての日々 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 橋本努氏による書評 | トップページ | 学生委員長としての日々 »