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2007年5月 8日 (火)

モラルハザードの例:夕張市の場合

今日の政治学概論(名張)で、“政府の失敗”の話をし、モラルハザードの説明をした。テキストの該当箇所は、『はじめて出会う政治学〔新版〕』(有斐閣)33頁、および240頁である。

その授業後に寄せられた質問の中に、次のようなものがあった。その質問文をそのまま紹介すると、それは次のとおりである:

北海道の夕張市が財政赤字になっていて、多くの施設が閉鎖されましたが、これは政府(地方自治体?)がモラルハザードを行なったからですか?

なかなか良い質問だと思う。その通りである。それは、夕張市がモラルハザードの状態に陥って、ずさんな事業を行なった結果であった。このことを詳しく報じた連載記事が北海道新聞のウェブサイトに掲載されていたので、興味のある受講生諸君は、どうぞお読みいただきたい(夕張よ 盛衰の軌跡)。

詳しくは、この北海道新聞の連載記事でリポートされているが、要するに、石炭事業から観光事業へと転換したときに、夕張市においてあまりにも無謀な事業計画が繰り返された、ということである。その際の資金繰りのやり方にも、大いに問題があったようだ。その結果、2007年3月6日、夕張市は約630億円(!)もの負債を抱えた状態で、正式に財政再建団体へと移行することになったのである。上記の連載記事には、その“モラルハザード”ぶりが克明に報じられている。

とはいえ、この連載記事(全6回)の第6回目には、夕張メロンに関する明るい記事も載せられている。というのも、夕張農家は、いたずらに行政に頼ることなく、このブランドものの新品種メロンを開発し、厳しい品質管理と東京進出を自力で果たしただけでなく、今年は台湾への輸出に着手するなど、着々と業績を伸ばしている様子が報じられているからである。

一方におけるこの夕張メロンの素晴らしい健闘ぶりと、他方における夕張市の観光事業の財政破綻--この両者の鮮やかな対照は、われわれに大切なことを教えてくれているだろう。受講者諸君にも、この連載記事を読んで、考えていただきたいと思う。

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コメント

山中先生へ

夕張のニュースはよく見るのですが夕張市民は本当に大変ですよね。
市が破綻するということはこんなにも生活が脅かされることなのか、と思ってしまいます。

モラルハザードは本当に夕張市だけではなく、日本中(あるいは世界中)に渦巻いていますよね。僕はモラルというのは個人のプライベートなライフスタイルに密接に結びついていると考えていますので(仕事とプライベートと簡単に分けることはできないものだと思っています)、世界中の先進国の住民や発展途上国のエリートたちにいたるまで生き方を見直す時期にきているのではないのかな、と思います。

投稿: スメルジャコフ | 2007年5月 8日 (火) 23時34分

スメルジャコフさん、

たしかに、モラルハザードは、色々なところで見られる現象でしょうね。

しかし、たとえば夕張市は今年1月の成人式を、そのための市の予算ではなしに(その余裕がなかったようです)、新成人たちが自分たちの力で、ささやかながらも手作りで成人式をやり遂げた、と確かニュースで報じられていたように思います。その新成人たちの頑張りは素晴らしかったです。

人間はたしかに誤ることもありますが、それを反省して、心を入れ替えて、新たにやり直す力も人間には備わっているのでしょうね。

投稿: 山中 | 2007年5月10日 (木) 06時41分

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