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2007年7月13日 (金)

佐々木毅『いま政治になにが可能か』を読む

二日ほど前に、佐々木毅『いま政治になにが可能か:政治的意味空間の再生のために』(中公新書、1987年)を読み終えた。これは、今から2ヶ月ほど前に近所の古書店で、なんと105円(!)で売られていたのを、大喜びで買っておいたものだが、最近、ある必要を感じて読み始めていたのである(*)。

(*)その「必要」というのは、ハイエク全集第Ⅰ期(春秋社)の新装版が刊行されるにあたり、その第10巻『自由人の政治的秩序』の新解説を執筆することになっているのだが、その執筆の参考になるのではないか--と判断したからである。この点については、機会があれば、また後日、本欄で書くことにしたい。

著者の佐々木毅氏は、東京大学法学部教授として長らく政治思想史と政治学を教えてこられたが、2001年4月から4年間、東京大学総長を務めたのち、現在は学習院大学法学部教授として、政治学を教えておられる。わが国を代表する政治学者の一人である。最近では、『政治学は何を考えてきたか』と題した著書を、筑摩書房から昨年12月に出版されている。この最近著の帯にはこう書かれている--グローバリズムに支えられた「市場」は利益政治を解体した。〈帝国〉に翻弄される「一国民主主義」! リベラル・プロジェクトは生き残れるか?--この問題意識は、まさに私のそれと重なるものであり、大変興味深い。

さて、ここで紹介している『いま政治になにが可能か』は、著者が1987年の1月から2月にかけて執筆したものである。当時は日米経済摩擦が深刻さを増すとともに円高が歯止めを失って着々と進行していた時期であり、そのような時期に書かれた本書には、日本政治が戦後定着させてきた一国主義的な利益分配政治がもはや通用しなくなってきた状況に対する危機意識が一本の赤い糸として貫かれている。たしかに今からもう20年も前に書かれたものだが、「政治的意味空間」という概念を軸として、日本政治には根本的・構造的欠陥があるのではないかと鋭く指摘する氏の議論は、本質的な点で、現在でもそのまま通用するのではないか--という思いを私は禁じえなかった。

名張学舎の政治学概論の授業で、参考文献として挙げておいたが、ここに改めて紹介することで、学生諸君に、本書を読むことをお勧めしておきたいと思う。私の授業の教科書ではなく、あくまで参考文献だから、定期試験を控えた今の時期にすぐ読み始める必要はないが、試験を終えたあと、この夏休みにでも読まれてはいかがだろうか? 残念ながら本書は現在品切れ状態であるから、古書としてしか入手できないが、少々の手間をかけてでも入手し、読むに値する書物である。「吉野作造賞」を受賞した名著である。

なお、佐々木毅教授の現在の問題意識については、学習院大学法学部政治学科の教員紹介欄に書かれているので、読まれるとよいと思う。

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