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2007年12月31日 (月)

2007年の回顧と2008年の抱負

もうすぐ終わりを迎えようとしている2007年は、その前半にいろいろな変化の起こった年だった。3月には初めての単著が刊行された(その後幸いにも一定の評価をいただいた)。4月には皇學館大学社会福祉学部で学生委員長になるとともに、我が家の一人娘が幼稚園に入園した。ところが6月には母が急逝。それを受けて11月中に喪中ハガキを出したため、今年は年賀状作成のない静かな年末である。

研究の上では、単著の刊行という大きな一区切りを迎えた後、次の新たな研究方向を模索する日々が続いた。試行錯誤の末に何とか辿り着いた構想は、さしあたって次の論文のテーマとして、ハイエク、進化ゲーム理論、およびマイケル・ポラニーといった議論(論者)を取り上げつつ、「自生的秩序論の諸相」を描いてみようか、ということである。昨年の大みそかに書いた「グリーン・リベラリズム」も勿論念頭においているが、その本格的な研究はもう少し先のことになりそうである。

ところで、実はその単著の刊行後すぐに、それを博士号請求論文として京都大学に提出したのだが、その口頭試問が12月20日に行われた。その学位申請が認められれば、3月に博士号を授与されることになる。

もう一つ研究関係の仕事では、春秋社によるハイエク全集第Ⅱ期の第5巻政治学論集の翻訳も、来年3月末が締切である。幸い共訳となったので、私の分担は半分(あるいはそれ以下)に減った。その分、締切に遅れる言い訳も(ますます)できなくなったので、この翻訳の仕事にも気合を入れて頑張らねばなるまい。

教育の上では授業のコマ数が増え、多用な日々が続いた。10月からは、本務校の皇學館大学のみならず、非常勤で大阪市立大学法学部(第2部)で政治学の授業を担当することにもなったので、毎週金曜日には大阪市の杉本町に通うことにもなった。来年度もその非常勤を継続する予定なので、多用な授業の日々が来年も続きそうである。

英語学習では、実はこれまで通ってきたECCを11月より3ヶ月間休学することにした。定期的に通う時間がとれなくなってきたからである。もしかすると、「英会話学校に通う」という形での英語学習は、このままやめることになるかもしれない。その場合には、それに代わる学習方法を模索していくことになるだろう。昨年の大みそかには「英検1級への挑戦」を目標に掲げていたが、結局今年はそれが出来なかった。来年にできるかどうかも少々怪しいが、目標としては抱き続けていきたいと思っている。

健康面では、5月の定期健診でなかなか良い結果が出るなど、基本的に健康な日々を過ごした。歯も丁寧に磨く習慣がすっかり身についたが、風邪で数回休講してしまったのは、昨年同様だった。来年こそは、休講をなくしたいものである。

来年の2月7日には39歳になる。不惑の40歳を迎えるまで、あと1年とひと月あまりである。不惑の年に少しでもふさわしいほどに成熟していけるよう、これからも真面目に生きていこうと思う。読者の皆さんも、どうぞ良いお年をお迎え下さい。

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2007年12月29日 (土)

相互扶助を語る自生的秩序論:数理社会学における進化ゲーム理論

ハイエク研究の世界のみならず、数理社会学の世界でも、実は「自生的秩序論」が盛んに語られてきているらしい。そのことを、つい最近、次の論文によって知ることができた。

石原英樹(2006)「〈自生的秩序〉の論理-ゲーム理論と正義」土場学・盛山和夫(編著)『数理社会学シリーズ4 正義の論理-公共的価値の規範的社会理論』勁草書房:127-145.

これによると、「自生的秩序」「自生的な秩序形成」という言葉が、数理社会学の分野では頻出するという。数理社会学という分野で自生的秩序論が盛んに語られていることを、恥ずかしながら私自身は全く知らなかったので、この論文は私にとって非常に新鮮な驚きを覚えるものだった。

この論文で石原氏は、数理社会学で議論されている多様な自生的秩序論を手際よく整理してくれているので、私にとって非常に有益だったのだが、そのなかでも特に私の目を引いたのは、「相互扶助を語る自生的秩序-1990年代の進化ゲーム理論」と題された第3節における議論だった。なかんずく、クロポトキンの『相互扶助論』に依拠しつつ他律的支配を否定するアナーキズムの数理版と言うべき議論が1990年代において「進化ゲーム理論」として展開されている、という指摘には、大変驚かされた。というのも、同じく自生的秩序や進化を唱えるものでも、それはハイエクのそれとは全く対極的なもののはずだからである。

マイケル・ポラニーといい、数理社会学における相互扶助を語る進化ゲーム理論といい、「自生的秩序論」といっても、それはハイエクの議論とはかなり異質なもののようである。こうした自生的秩序論の“諸相”を追っていくことが、私の次なる研究テーマの一つとなるかもしれない。

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2007年12月26日 (水)

マイケル・ポラニー文献収集記:ちょっとした失敗談

去る11月30日の記事でも述べたように、筆者は先月からマイケル・ポラニーの研究に着手しているのだが、そのための文献収集の際にちょっとした失敗があり、我ながら笑ってしまった。

マイケル・ポラニー関係の文献を色々と探し、入手していく過程で、ポラニーとハイエクとを比較した次の論文があることを知った:

Jacobs, Struan (2000) "Spontaneous Order: Michael Polanyi and Friedrich Hayek", Critical Review of International Social and Political Philosophy, 3:4, 49-67.

この論文タイトルから「これは是非とも入手せねば…!!」と思い、この学術雑誌(Critical Review of International Social and Political Philosophy, 以下 CRISPP と略記)の所蔵状況を国立情報学研究所の Webcat Plus で調べてみたのだが、残念ながら、日本の大学図書館にはこのCRISPPがほとんど入れられておらず、上記の Vol.3, No.4 に至っては所蔵が皆無であった。

それでいったん諦めかけたのだが、「ちょっと待てよ…」と思い直し、今度はGoogleを使って、CRISPP のフルネームを直接入力し、検索してみたところ、何と CRISPP ウェブサイトそれ自体が存在しており、そこから有料で上記の論文を直接購入できることが分かったのである!

それで大いに喜んで、オンライン上でセッセと手続きを進め、Mastercard での精算手続きも済ませ、無事に購入申込を完了した。それが先月の28日のことである。代金は US $25であった。

そうしてその後、「この論文のコピーが航空便か船便で送られてくるにちがいない」と思い、昨日までずっと首を長くして待っていたのだが、いつまでたっても一向に送られてこない。「これはおかしいな…」と思い、先月はその受信を簡単に確認していただけの注文確認メール(purchase confirmation)を今度はよくよく読んでみたところ、次の注意書きに目が点になった:

Note that purchased articles are available to view online or download for 72 hours from the time of purchase. No print article is supplied.

「ん? 購入時から72時間以内にダウンロード?? プリントされた論文は提供されない…???--シマッタ!!」 要するに、郵便でハードコピーが送られてくるのを待つのではなく、購入から三日以内にPDFファイルをオンラインでダウンロードすべきだったのである…!!

しかし、当然すでに期限切れ(expired)となっており、先の購入代金25ドルは、この失敗の代償として泡となって消えてしまった。結局、もう一度手続きを最初からやり直し、再度25ドルを支払って、今度は即座にファイルをダウンロードし、昨日無事に目的の論文を入手できたのであった。

この失敗に我ながら笑ってしまったのは、購入手続きをオンラインで完了させるまでは時代に適応していたのに、それが終わった途端、「ハードコピーの郵送を待つ」という旧式の発想に逆戻りしてしまっていた自分が、妙に可笑しかったからである。考えてみれば、この“フラット化”の進んだ時代に、オンラインでのダウンロードこそが当たり前なのであった。

いずれにせよ、25ドルの「レッスン料」を支払って(?)、フラット化時代にふさわしい文献収集体験をすることができた。この経験を生かして、これからも研究に必要な文献収集にセッセと勤しみたいと思う。

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2007年12月13日 (木)

人事も経理も中国へ:フラット化する世界

12月に入って、いつの間にか、もう中旬になってしまった。このような更新ペースだと、とても「日記」とは呼べないので、短い文章でもいいから、もう少し気楽に書き綴っていった方がよいのかもしれない。

ところで、私が授業の準備で行なっていることの一つは、NHKのドキュメンタリー番組を録画し、授業で学生諸君に見せることである。以前に録画しておいたものを、先週の日曜日にまとめて確認したのだが、その中でとくに強く印象に残ったのは、今年9月3日放送のNHKスペシャル「人事も経理も中国へ」である。ここでレポートされていたのは、大手通販会社「ニッセン」が中国・大連に業務を次々とアウトソーシング(外部委託)し、コストダウンを図っていく姿だった。ただし、それがただちに「ニッセン」において日本人労働者の解雇につながるわけではなかったが、マニュアル化され、誰でもできるよう定型化された業務が続々とアウトソーシングされていくなかで、そうではない新たな業務を見つけていくことを強烈に迫られる日本人労働者の苦悩と努力が見事に描かれていたのである。

これはまさしく、ピュリッツァー賞を3度受賞した有名なジャーナリストのトーマス・フリードマンの手になる最近の話題作『フラット化する世界』(日本経済新聞社、2006年)で描かれた世界である。この本で「世界の“フラット化”現象」について一定の知識は得ているつもりだったが、こうして改めて映像で見せられると、その衝撃がアリアリと伝わってくる。「これがあの“フラット化”か。う~むむむむ…」と思わず唸ってしまった。

学生諸君にお勧めしておきたいのは、こうした良質のドキュメンタリー番組を普段から見ておき、いま世界で何が起きているか、よく知っておくことである。その放送予定や再放送予定はNHKオンラインの「ドキュメンタリー/教養」コーナーで知ることができるから、あらかじめ確認しておくとよいだろう。いずれにせよ、世界は間違いなくグローバル化・フラット化しているのである。

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