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2010年1月13日 (水)

「温暖化はウソ」に対する科学者の反論

日本では「温暖化はウソ」という議論がマスメディアで好んで取り上げられることがある。私の授業の受講生の中にも、その影響を受けている学生が時折見受けられることもある。

そのような「温暖化はウソ」という主張に対して、科学者たちが反論しているペーパーを今日見つけることができた。これは、2005年度環境経済・政策学会での討論資料などに基づいて書かれたものだという。

地球温暖化問題懐疑論への反論コメント ver.2.4(2008年7月7日)

この反論ペーパーは58ページのPDFファイルであり、全部で4つの章から成っているが、今日はその第2章まで読むことができた。その第1章、第2章のタイトルは次の通りである。

1.温暖化問題における「合意」
2.温暖化に関するマスコミ報道

まずその第1章によると、温暖化に対する懐疑論者からは「温暖化、特に温暖化への人為的な影響に関する世界的な合意はない」と言われることがあるが、実際には、「20世紀後半から起きている温暖化は二酸化炭素が主な原因」という説は、ほぼ全ての気候学者が同意した議論であり、少なくとも現時点においては、その信憑性を否定するような観測事実は皆無に等しいという。

それに対して、いわゆる懐疑論者は圧倒的な少数派であり、かつ全く分野が異なる専門外の研究者あるいは非研究者である場合が少なくない。しかもその懐疑論は、世界中の様々な分野の学界において多くの研究者が行ってきた議論の帰結や最新の知見を十分に踏まえた議論には必ずしもなっていないというのである。

また、米国の温暖化懐疑派の背後には石油メジャーのエクソンモービル社が控えているという。これは有名な事実であり、米国の科学者グループ「憂慮する科学者同盟 Union of Concerned Scientist」が、2007年1月にエクソンモービル社と懐疑派とのつながりに関する非常に詳細なレポートを出しているとのことであった。

次に、第2章の温暖化問題に関するマスコミ報道であるが、米国ほどではなくとも、日本でも「報道におけるバランス」などを理由に、しばしば温暖化懐疑派の意見が新聞などに掲載されることがある。

ところが、それに対して、実は欧州においては、米国や日本のメディアに比べると、懐疑的な意見が取り上げられる機会は極端に少ないのだそうである。というのも、英フィナンシャルタイムズ紙の環境分野担当の記者 Fiona Harvey の語るところによると、「懐疑派の議論を同じように取り上げてしまうと、(実際はそうではないのに)彼等がアカデミックの世界でも大きな勢力を持っているという間違った印象を読者に与えてしまうことになる」からである。

かといって、この反論ペーパーの筆者たちが、日本のマスコミが懐疑論を取り上げる自由を否定しようとしているわけではない。しかし、その筆者たちは、メディア関係者に対して、懐疑論を取り上げる際にはその中身や懐疑論者の背景に関してもう少し勉強しておくこと、および、懐疑論は必ずしも現在の科学知識をよく代表するものではないので、それを重視しすぎないことを切に訴えている。

そもそも、大部分の懐疑派は気候科学や地球科学を専門とする研究者ではなく、少なくとも欧米では、特定の利益団体と結びついた人たちであるという。そうした戦略的懐疑派は既得権益の死守を目的としている。彼らは専門家や学会を主なターゲットとしているのではなく、「温暖化問題はなんとなく不確実性が大きい」というイメージを、むしろ世間一般の人々をターゲットとして、植え付けようとしている。そして、日本には、そのような既得権益死守を目的とした人々の片棒を無意識のうちに担いでしまっているナイーブな懐疑派の人々が少なくないのだというのである。

私が思うに、日本でこうした懐疑論が一部の読者や視聴者から歓迎されることがあるとすれば、その理由の一つは、そうした報道が“不都合な真実”から自分たちの目をそむけさせてくれる効果があるからかもしれない。しかし、そのような現実逃避ではなく、科学者たちのメッセージに真摯に耳を傾け、気候変動防止のため今こそ行動を起こすべき時だと、私は思う。

【追記①】
なお、この反論ペーパーを私が見つけたのは、環境ジャーナリストの枝廣淳子氏の主宰するウェブサイト「日刊温暖化新聞」を通じてだったので、参考までに、そのリンクを貼っておくことにする。

日刊温暖化新聞:こんな質問にはどう答える?

【追記②】
以上の文章を書いたのち、念のために調べてみると、ここで取り上げた反論ペーパーの最新版(Ver.3.0)が2009年5月21日付で出されていることが分かった。

地球温暖化問題懐疑論へのコメント Ver.3.0(2009年5月21日)

今はこの最新版を読む時間は取れないが、いずれ機会を改めて読もうと思っている。

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