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2010年8月 3日 (火)

授業での質問に答えて(1):消費税の増税をめぐって

前回の記事から2ヶ月以上もあいてしまったが、夏休みに入り、ようやくひと息ついたところである。

さて、伊勢学舎での政治学入門の授業で、7月12日と19日に、聴講券の裏面に書かれるという形で質問が計二つ寄せられていたのだが、授業中には答える時間的余裕を持つことができなかったので、このブログ上で答えさせてもらうことにしたい。今日はまず、7月12日に寄せられた質問に答えよう。

【質問要旨】自分は、今回の参議院選挙で注目されていた消費税増税には反対だったが、先生は賛成だったか、反対だったか?〔実際には「ですます調」で質問が書かれていたが、本欄では「である調」で統一して表記する〕

【回答要旨】消費税増税それ自体は必要だと以前から考えていたが、今回の菅首相からの提案の仕方には問題があった。
 菅首相は、選挙前にあえて増税を打ち出すことで、却って選挙に勝てると思っていたフシがあるが(だからこそ選挙期間中に首相の発言は世論の反応を受けて揺らいでしまった)、財政再建という課題は、単なる選挙対策にとどまらない最重要課題である。

今回は、この回答要旨の前半部分、すなわち消費税の増税自体は必要だと考える理由について、もう少し説明を加えることにして、後半部分については稿を改めて説明を続けることにしたい。

さて、消費税の増税自体は必要だと私が考える理由は、日本政府の財政赤字が相当深刻であり、財政再建はもはや待ったなしの状況だと思われるからである。『週刊ダイヤモンド』2010年7月10日号で消費税の特集記事が組まれていたが、その35頁で指摘されているように、日本政府の2008年度の総債務残高は846兆円である。これは同年のGDP比でなんと171%(!)であり、ギリシャを上回る世界最悪水準である(*)。

(*)なお、政府の債務残高を論じる場合、「総債務残高(グロス債務残高)」で見るか、それとも、そこから政府の持つ金融資産を差し引いた「純債務残高(ネット債務残高)」で見るかが専門的には問題となるが、本欄で論じる余裕はないので、詳しくは『週刊ダイヤモンド』2010年7月10日号の34-36頁を参照されたい。

にもかかわらず、2010年度の一般会計予算では、歳入総額92.3兆円のうち、国債発行額は44.3兆円とされており、その国債発行額は歳入総額の実に48%を占めるに至っているのである。ギリシャとは違って、日本の国債の多くが海外投資家ではなく国内の金融機関によって支えられているためにまだ安心だと言われているとはいえ、こうした赤字体質をこれ以上放置しておくわけには、やはりいかないだろう。そのためには、やはり消費税の増税を含めた税制全体の抜本的な改革が必要だと私は思う。

なお、今回の参議院選挙で議席を伸ばしたみんなの党は、「名目4%の経済成長が続けば5~10年で基礎的財政収支(プライマリーバランス)が改善するので、消費税増税は必要ない」と主張しているが〔『週刊ダイヤモンド』2010年7月10日号の28頁を参照〕、物質的にこれだけ成熟・飽和した日本経済が名目4%の経済成長を続けていけるとは、私にはとても思えない。

たしかに歳出の無駄を削ることは重要だが、おそらくそれだけでは不十分だろう。失業対策のための職業訓練や、人材育成のための教育にもっと力を入れていくべきであるとするならば、そのための増税はやはり不可避であると私は思う。

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