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2010年8月 4日 (水)

授業での質問に答えて(2):菅首相の消費増税発言をめぐって

前回に引き続き、消費税の増税への賛否について、学生から寄せられた質問に答えることにしよう。今回は、「菅首相からの提案の仕方には問題があった」という点について、説明を加えていくことにする。その説明にあたっては、参院選後に出された『週刊ダイヤモンド』2010年7月24日号(pp. 102-111)の、田中秀征、藤原帰一、片山善博、グレン・S・フクシマの四氏による討論を参考にしたい。その討論で四氏が揃って指摘していたのは、今回の菅首相による消費税率10%への言及の仕方が、いかにも唐突で稚拙だったということである。

フクシマ氏は「消費増税は財政再建のうえで避けられない非常に重要な政策だが、選挙の直前に表明したのは賢明ではなかった」と述べている。にもかかわらず、なぜ菅首相はあえて選挙直前にわざわざ消費税の増税を打ち出したのか。田中氏によると、「菅氏は消費税率を上げると選挙に勝てると思った節がある」というのである。「確かに世論調査をすれば増税の必要性を認める結果が出る。だが、それはあくまでも将来の安定した年金制度や医療制度のためであって、そのためにも早くムダをなくせというのが世論だ。〔中略〕菅氏はそれを完全に読み誤っただけではなく、議論なしで唐突にやってしまった」と田中氏は述べている。

片山氏によると、菅首相が議論なしに唐突に消費増税を持ち出した要因として、来たる6月26-27日にカナダで開かれることになっていたG20首脳会合で、ギリシャ問題を受けて、財政再建が主要論点になることがあらかじめ明らかだったことを指摘している。そのG20首脳会合に臨むにあたって、「手ぶらで行くのはそこで国際舞台にデビューする菅氏にとっては耐えがたいことだ。なにかしらの材料が要るということで、G20の事前準備を進める段階で、〔かねてより増税による財政再建を必要と考えていた財務官僚の口から〕首相の耳にさりげなく入れられるわけだ」と片山氏は述べている。菅内閣の人気が高いから大丈夫と考えた財務官僚たちが、増税を首相に植え付けたというわけである。

つまり片山氏は、菅首相の背後に財務省の意向が潜んでいたと睨んでいるわけだが、氏がそう推測している原因の一つは、首相が「プライマリーバランスを20年までに黒字にする」と発言していたことである。「プライマリーバランス」という言葉は財務省の業界用語で、国民にはわかりにくいのもかかわらず、国民にきちっと説明しなければいけない人が業界用語をそのまま持ち出したところに、もう背後関係が透けて見えるというのである。

もっとも、藤原氏は「首相の消費増税発言は財務省に操られていただけだ」という片山氏の推測には異論を唱えているが、その藤原氏も、首相の消費増税発言はG20を睨んでのことだった--ということについては、片山氏に同意している。要するに菅首相は、財務省に背後で操られていたかどうかはともかくとして、いずれにせよG20を見据えて、党内での議論を経ることなく唐突に消費増税を持ち出したのであり、そこには、そうした方が参院選に勝てるという政略があった--ということなのである。

しかしながら、日本政府の財政再建問題は、目前の選挙に勝てるかどうかという問題に矮小化されてしまうには、あまりにも重大な問題である。それを有権者も分かっていて、菅政権にお灸をすえた--というのが、今回の参院選の結果だったのではないかと私は思う。

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