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2012年6月 5日 (火)

公務員試験のミクロ経済学について思ったこと

私の勤務する皇學館大学では、大原専門学校による公務員試験対策講座を放課後に受けることができるので、この五月より、私も公務員志望の学生と一緒に、その授業を受けている。その理由は、試験勉強に取り組む学生たちと苦楽を共にしようと考えたからである。

その学生たちの苦労がよくわかるのは、例えば、ミクロ経済学に出てくる計算問題を解けと言われた時である。そこでは、完全競争市場における消費者/生産者の効用最大化/利潤最大化条件を求めるために、偏微分を使って計算するーーといったような作業が求められるのだが、これが結構ややこしくて、手間がかかるのだ。

こうした計算問題を、公務員試験の一次試験(択一式)で出題するのは、一体何故なのだろう?ーー私が思うに、それはおそらく、型の決まった日常業務を忠実にこなす意欲と能力が受験者にあるかどうかを判定するためだと思う。

新しい問題発見・解決にむけた意欲と能力については、それとは別の試験、例えば論文試験とか面接での集団討論などで見定めるのだろう。その前に、まず一次試験では、定型的で、必ずしもエキサイティングではなく、それでいて結構複雑な日常業務を着実にこなせるかどうかーーその資質の有無を問うていると思われるのである。

他方、大学教員として私が養成すべきなのは、何か新しい問題を発見し、その原因を探り、その解決ができる能力であり、そして、そのための旺盛な意欲である。もしも私が現在のように公務員試験対策講座を受けていなかったとしたら、このことにのみ専念していたことだろう。

だとしたら、公務員試験の択一式で、完全競争市場に関わる出題がされているのを見て、「ナンセンス……!」と一蹴してしまっていたかもしれない。というのも、私の専門はハイエクの政治・経済思想であり、そのハイエクは、完全競争市場などという極めて非現実的な想定を行うことを厳しく批判していたからである。ハイエクに言わせれば、完全競争市場という概念は自由市場を擁護すべき根拠を却って掘り崩してしまうことになる。彼はそのことを、社会主義経済計算論争で雄弁に主張していたのである。

しかし、そんな専門的な知識を公務員志望の学生たちに頭ごなしに説いたとしても、あまり意味を為さないだろう。というのも、その学生たちは学者になろうとしているわけでは決してないからである。

もっとも、定型的な仕事だけしかこなせない、あるいはこなそうとしないとすれば、それはまた別の意味で問題だろう。だからこそ、他方で私のような大学教員の出番があるのだ。

しかし、その大学独自の仕事にだけ専念していたのでは、一次試験の勉強に苦労している学生たちの気持ちは、全く分かってやれなかったに違いない。そんなわけで、私は今、公務員志望の学生たちと一緒に、ミクロ経済学を受講している。

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